ARGカフェの最大の収穫

ARGカフェの懇親会岡野裕行さんと話しをさせていただきました。
岡野さんは文学館の研究を図書館情報学の観点からなされているとのことでした。
ちょうど大阪府立国際児童文学館のことがニュースになっていますが、まさにその関連の研究をなされているとのことでした。


週が明けたら、岡野さんから岡野さんの博士論文と、そのベースになった論文2件を送っていただきました。
送っていただいた博士論文。

岡野 裕行, 日本近代文学研究における文学館の役割 - 「全国文学館協議会」加盟文学館の発行物を中心に -, (2006)
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/pub/dl/e_thesis/thesis_phd.html

送っていただいた論文2件。

岡野 裕行, 個人書誌作成における文学館の役割 - 三浦綾子記念文学館を事例として - : 図書館情報メディア研究, Vol.3, No.1, (2005) pp.77-87.
http://hdl.handle.net/2241/11446

岡野 裕行, 文学館の「出版者的機能」に関する考察 : JIMS, Vol. 5, No. 1, (2006) pp.21-38.
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jims/5/1/5_21/_article/-char/ja/

早速読ませていただきましたが、読んでいるうちにぐいぐい引き込まれてしまい、一気に読みました。
岡野さんの博士論文は、文学館の持つ出版社的機能を明らかにした研究で、「全国文学館協議会」加盟の文学館81館の内、開館準備中の4館と、「近代」文学館ではない1館を除いた76館を対象にし、そこが発行している全出版物をリストアップし、それを6種類の性質と17種類の携帯に分類するとともに、その近代文学研究における意義を明らかにしたものです。
対象とした出版物は6283点。それが付属資料1の「「全国文学館協議会」加盟文学館発行物目録」としてまとめられていますが。全807頁にわたる膨大な目録を見るだけでも、岡野さんの研究の意義が伝わってきます。
これまでほとんど研究対象とされてこなかった文学館の出版機能に着目するとともに、地道な調査をなされたその成果に圧倒されます。
ARGカフェの懇親会で、ほとんど先行研究がないと話されていましたが、未開拓の分野を切り開いていくその情熱が伝わってくる研究でした。
自分自身は「文学館」というものにほとんど興味は無かったのですが、図書館・情報学の類縁のところに、まだほとんど手のつけられていない「文学館」という研究対象があったのか、と驚きました。
文学館とは何か、文学館はどのような機能を持っているのか、それは図書館や博物館とどのような関係にあるのかを明らかにしていくことが、岡野さんの研究だと思います。
岡野さんの研究はまさに「文学館学」の礎を築いていくものだと思います。
岡野さんの今後の研究の発展に多いに期待しています。


私にとってのARGカフェの最大の収穫は、岡野さんの研究を知ることができたことです。


岡野さんの著書。

三浦綾子書誌

三浦綾子書誌

三浦綾子 人と文学 (日本の作家100人)

三浦綾子 人と文学 (日本の作家100人)