著作権保護技術とは

自称権利者89団体がJEITAに対して公開質問状を出したとのこと。

JEITAに「真意を質す」、権利者89団体が再び公開質問状
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/06/16/19951.html

質問状はPDFで公開されています。*1

JEITA電子情報技術産業協会)に公開質問状を再度送付
http://www.jasrac.or.jp/release/08/06_3.html

公開質問状(PDF)
http://www.jasrac.or.jp/release/08/pdf/06_01.pdf

質問は6項目、設問7+1に及ぶものだが、最初の項目のところで自称権利者達の著作権保護技術に関する認識を見て、愕然とした。
PDFの2ページめのところだが、図も含むので、PDFからスナップショットで引用する。なお、赤の下線は引用者によるものです。

この説明によると、著作権保護技術は「私的録音録画の範囲を超えないよう、ふたをかぶせるだけ」のものだとのこと。
ちょっと待て、と言いたい。
確かに、ダビング10では9回の複製と1回のムーブを許可しているが、それは技術的にそうしているだけのことであって、設定によっては複製をさせないことも可能だ。*2
例えば、CCCDは特定のソフトを使わないPCへの複製は認めないものだったし、音楽や映画などのDVDソフトも、一般的にはコピーガードがかけられている。*3VHSビデオでも、コピーガードはかけられていた。
技術は技術であり、それをどう運用するかは、運用する側にかかっている。
これまで著作権保護技術は「私的録音録画の範囲を超えないよう、ふたをかぶせるだけ」の範囲で運用されてきたとは私は思わない。「私的録音録画の範囲」であっても、それをさせないように運用されてきた。


さらに問題となってくるのは、著作権法30条の二の規定だ。

第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

(中略)

二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

技術的保護手段、つまり著作権保護技術が課せられていて、それを回避した場合は私的複製、つまり私的録音録画ではない、とされている。*4
著作権保護技術を用いることで、それを回避すれば私的録音録画ではないとすることができる、つまり、著作権保護技術を用いることで私的録音録画の範囲を狭めることが可能であり、実際に狭められている。
コピーワンスなどはまさにその例であり、ダビング10になったとしてもそれは同じである。


この公開質問状における、自称権利者達の著作権保護技術の説明は、詭弁であると私は思う。

*1:できれば、HTMLで公開して欲しかった

*2:とはいえ、それを回避することが不可能であるとはいえない。それを回避する技術が出てくることは予想できる。

*3:それを回避する方法はあるが。

*4:厳密には技術的保護手段と著作権保護技術はイコールではないが、ニアリーイコールと考えて述べています。