図書館職員は著作権思想の最高の伝達者でなければならない

黒澤節男氏の「Q&Aで学ぶ図書館の著作権基礎知識」の第2版が出た。

Q&Aで学ぶ図書館の著作権基礎知識 (ユニ知的所有権ブックス)

Q&Aで学ぶ図書館の著作権基礎知識 (ユニ知的所有権ブックス)

第1版が出た時にも紹介したフレーズだけど、とても共感を覚えているので、改めて紹介します。
本書の表紙カバーと本文の10頁の小見出しに使われているが、

図書館職員は最高の著作権思想の伝達者でなければならない

この1文にはとても共感を覚えます。


図書館職員は利用者の立場に立って著作権法の許す範囲内でできる限り利用者の要望に応えようとすることもあり、また、著作権者の権利を守るために、利用者の無茶な要望を断ることもある。
業務を通じて、権利の保護と利用のバランスを考える機会が多い。
だからこそ「最高の著作権思想の伝達者」たりえるのだと思う。
しかし、黒澤氏は図書館職員が最高の著作権思想の伝達者「である」とは書いていない。「でなければならない」と書いている。
それは現状ではまだ、図書館職員は「最高の著作権思想の伝達者」にはなっていない、ということだろう。


本書の大半はQ&A形式で図書館職員が遭遇するであろうケースについて解説しているが、その内容は教科書的なものである。
では、その教科書的な内容を理解すれば「最高の著作権思想の伝達者」になるのだろうか?
私は必ずしもそうであるとは思わない。
教科書的な内容を理解するだけでは「著作権を守りましょう」ということになりがちだが、それだけでは「最高の著作権思想の伝達者」にはなり得ないと思う。
著作権法では、権利の保護と同時に公正な利用を謳っている。その保護と利用のバランスが大事だと思う。
本書の教科書的な解説を理解した上で、保護と利用のバランスを考えて判断することができて、初めて「最高の著作権思想の伝達者」たりえるのあろう。
権利の保護を謳うだけでは「最高の著作権思想の伝達者」だとは私は思わない。
そういう意味では、本書を理解することは、スタートラインに立つことであって、そこから先に進むことを私は図書館職員に求めたい。
本書をベースにして、さらに一歩進んでいくことで、多くの図書館職員が「最高の著作権思想の伝達者」になって欲しいと思う。