包括契約が問題なのか?

一昨日に公正取引委員会JASRACに立入検査したとの報道がありました。

asahi.comジャスラック立ち入り検査 著作権めぐり他社排除容疑 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/0423/TKY200804230134.html

著作権等管理事業法の世界に公正取引委員会が口出ししてくるとは思っていませんでしたが、確かにJASRACは公正ではないところもあるので、公正取引委員会の指導で改善されるのはそれは歓迎したいです。
ただ、報道によると「包括契約」が問題とされているようです。

解説:JASRAC立ち入り 「競争を阻害」公取、5年前に指摘 契約手法改善なく - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080424ddm003040182000c.html

でも、自分は「包括契約」がそれほど問題だとは思いません。
包括契約」は利用する側にとっても、手間のかからない方式で、利用者にメリットがあります。「包括契約」をやめて「個別処理」にすると、利用者の負担が非常に大きくなります。利用者にとっては、簡便な方式を選ぶのは当然でしょう。

これまでも何度か書きましたが、著作権の集中管理団体が複数あって、それが公正な競争をしていたとしても、利用者にとってはメリットはない、むしろ、利用者を抑圧する方向にしか働かない、と私は考えています。
そして、諸悪の根源は「著作権等管理事業法」だと考えます。

JASRAC著作権等管理事業法 - Copy & Copyright Diary
http://d.hatena.ne.jp/copyright/20050915/p1

なぜ、著作権の集中管理に置いて、公正な競争が利用者にメリットをもたらさないかと言うと、基本的に著作物というのは代替物が無いからです。
例えば、Perfumeの「ポリリズム」をどうしても利用したいと思ったら、他の曲では代わりになりません。
Perfumeの曲を管理しているところから許諾を得ざるをえません。JASRACが管理していれば、JASRACから許諾を得なければならず、その時に他の団体との競争は発生しません。
自由な競争が無いというのは、JASRACの問題ではなく、代替物の無いところに「競争」を持ち込んだ著作権
管理事業法そのものの問題なのです。
ですから、仮に公取の指導の元、JASRACが「包括契約」を廃止して「個別処理」に変えたとしても、利用する側の負担が増えるだけで、メリットはありません。


そうではなくて、JASRACの問題は「独占」を背景に「優越的地位」を「濫用」していることだと私は思います。
「優越的地位」の「濫用」が無いのであれば、JASRACが独占することによるデメリットは、利用者にとってはほとんど無いと思います。

公正取引委員会には、「包括契約」ではなく、JASRACの「優越的地位」の「濫用」にメスを入れてほしいと思います。

JASRACに告ぐ(晋遊舎ブラック新書 5)

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