募金の集まらない図書館についての本を読んで

少し前に話題になったこの記事。

斐川町立図書館:財政難、募金1円も集まらず 図書購入費「みんなで育てて」 /島根 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/area/shimane/news/20080305ddlk32040162000c.html

はてなブックマークのコメントなどでは斐川町立図書館に対する批判的な意見も多かったが、この記事の斐川町立図書館についての本が出たので、読んでみた。

町立図書館をつくった!―島根県斐川町での実践から

町立図書館をつくった!―島根県斐川町での実践から

2005年5月にでた町立図書館をつくった!―島根県斐川町での実践からの増補版だ。
著者は現斐川町立図書館長*1の白根和夫氏。
前町長の公約で町立図書館を新設する時に、他県から招かれ準備室長に就任し、図書館の立ち上げに携わり、開館後は館長として図書館の運営をされてきた方だ。
斐川町立図書館は、2003年10月に開館したが、図書館界では結構評価されていた図書館のようで、文科省の出した「これからの図書館像−実践事例集−」でも取り上げられている。

これからの図書館像−実践事例集−小中学校との連携−島根県斐川町立図書館の連携(斐川町立図書館)−文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku/06040715/009.htm

「これからの図書館像」は2006年3月に公表されているが、旧版はまさに開館後の斐川図書館が注目されている時期に出版されたもののようで、増補版でも基本的には成果を誇らしげに語っているように感じた。
もちろん、当事者によるものなので、自分の功績を誇る部分もあると思うが、「これからの図書館像」でも取り上げられるぐらい、注目されていたことは確かだろう。

しかし、新聞記事にもあるように、町の財政悪化により、予算は大幅に削減されているようで、増補版ではその辺りの記述もなされている。
移動図書館の廃止など、サービスの縮小もなされており、新聞記事にある「図書館購入基金条例」についてもふれられている。
なお、本書の178頁に

新聞でも報道されましたので、少しずつ募金が集まっています。ありがたいことです。

とあるが、上記の毎日新聞の記事が3月5日付、奥付による本書の発行日は3月22日なので、引用箇所にある新聞の報道が毎日新聞の記事のことを指しているのかどうかは微妙なところだが、本書の記述を信じるなら募金は集まりつつあるらしい。*2
また、財政難による費用削減については、新町長の就任という面もあるようだ。
また、本書の174頁に、町議会での議員からの質問が取り上げられているが、それは財政再建するまでは、図書館の開館を週3日のみにし、サービスも貸出のみにすべきだ、というものだったらしい。
このような質問が議員からなされることからも、図書館がどのような状況に置かれているのかが伺える。
その状況の中では、利用者に対するアピールと同じぐらい、首長や議会に対するアピールが必要のように思う。
自分が、企業内専門図書館を運営していた当時、どれだけできていたか自信は無いが、この辺りについて、図書館界全体で考える必要があるんじゃないかな。
この辺りについては、少々古いが、この文献が参考になると思う。

CiNii - 経営母体へのPR:業務報告を超えた理解と支持を求めて (特集:戦略的PRのすすめ)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002827710/

*1:3月一杯で退任予定

*2:日経gooで日経4紙と全国紙5紙の記事を検索してみたが、基金についての記事は毎日の上記の記事のみだった。