ニコニコ動画が明らかにしたダウンロード違法化・著作権侵害非親告罪化の問題点

ニコニコ動画が、アマチュアバンドの映像を誤って削除したらしい。

「ニコ動」、アマチュアバンド映像誤削除で謝罪 - ITmedia News
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0710/22/news109.html

動画削除ミスのお詫び - ニコニコ動画 開発者ブログ(新着情報)
http://blog.nicovideo.jp/2007/10/post_192.php

削除されてしまった方には申し訳ないが、このニュースは現在パブリックコメントが行われている文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理と、法制問題小委員会中間まとめに盛り込まれた内容の問題点が非常に分かりやすい形で現れたものだと思う。

法制問題小委員会の中間まとめでは「適当ではない」と結論づけられたが、著作権侵害非親告罪化することについての議論が法制問題小委員会では議論されてきた。
著作権侵害非親告罪とされてしまうと、著作権者の告発無しに著作権侵害が取り締まられることになる。
しかし、著作権侵害であるかどうかを著作権者でない第3者が判断できるのだろうか。
今回ニコニコ動画は、適法にアップロードされた動画を「権利侵害動画」であると判断して削除を行った。
ニコニコ動画は適法・違法の判断を間違えたのだ。
第3者からみて、適法・違法の判断が難しいことが、今回の削除ミスで明らかになった。
著作権侵害非親告罪化すると、このような判断ミスによって告発されたり逮捕されたりするケースが出てくるだろう。
もちろん、一目で「著作権侵害だろう」と類推できるケースも多いが、第3者が的確に判断できるケースばかりとは限らない。

私的録音録画小委員会の中間整理では、違法にアップロードされたコンテンツをダウンロードする行為を違法化すべきとの意見が盛り込まれている。
ここでも前述の通り、第3者が違法・適法の判断をすることが難しい、という問題点が絡んでくる。
適法なコンテンツだと思ってダウロードしたら違法なコンテンツだった、違法なコンテンツだと思ってダウンロードをするのを止めたらそれは適法なコンテンツだった、というケースが出てくるだろう。
なお、違法とされるのは「情を知って」いる場合に限られるので、適法なコンテンツだと思って違法なコンテンツをダウンロードするケースは違法とされない。
なので、問題はないではないかという人もいるかもしれないが、私はそうは思わない。
どちらかというと、ユーザーよりもクリーエーターの側に大きな被害をもたらすと思う。
インターネット上でコンテンツを公開しているのは、大手レコード会社などの商用サービスだけではない。多くのアマチュアのクリエーターもコンテンツを公開している。
しかし、今回ニコニコ動画が誤解したように、アマチュアのクリエーターが適法にアップロードしたコンテンツを、ユーザーが違法コンテンツと誤解してしまうケースが多発するのではないだろうか。
そうなると、アマチュアのクリエーターが多くの人に見て欲しい・聞いて欲しいと思っていても、大手コンテンツプロバイダーのサービスとして提供されていないために、違法と勘違いされて多くの人に伝えられない、という状況になってしまうのではないか。
日本レコード協会などは「識別マーク」を普及させることによって違法・適法を識別できるとしているが、それは逆に、「識別マーク」のついていないアマチュアの適法コンテンツの流通を阻害することになるだろう。
これは、アマチュアのクリエーターの「表現の自由」を奪うことになりかねない。


今回のニコニコ動画の誤削除は、これらの問題を分かりやすい形で提示してくれたとおもう。