補償金か、DRMか

ITmedia Newsの記事で、津田さんの意見として紹介された発言が波紋を呼んでいるようです。

補償金はDRM強化よりまし?――私的録音録画小委員会で議論 - ITmedia News
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0709/05/news073.html

私は、DRMと補償金の二者択一であるなら、補償金の方を選びます。
ただ、補償金の意味合いは、大きく変える必要があると思います。
現行の補償金では、私的複製による経済的損失の補償、という意味合いです。
しかし、DRMと補償金の二者択一の場合は、ユーザーに私的複製の自由を保障するために、その代償としてユーザーが負担するもの、というものである必要があります。
つまり、一定の金額をユーザーが負担する変わりに、私的複製、私的コピーは自由にでき、権利者もそれを禁止できない、そういう体制が、ユーザーにとってもメリットが大きく、権利者も補償金の還元を受けられ、双方にとってメリットがあるのではないかと思います。
この考えは、名和小太郎氏が情報の私有・共有・公有 ユーザーから見た著作権 (叢書コムニス03)で述べているものです。

ただし、現行の著作権法をどのように改正すれば、そのような体制を作れるのか、具体的に思いつくことはできません。
DRMを禁止する、というような条文を盛り込むのは難しいと思います。
せいぜい、著作権法第30条第1項第2号の「技術的保護手段の回避」を権利制限の対象とはしない、という条項を削除するくらいでしょうか。
現在の審議会での議論では、補償金の拡大の是非が議論されていますが、私的複製の保証という観点があまり無いように思います。DRMで私的複製をできないようにしておいて、補償金も拡大する、というのはあまりにも都合の良すぎる主張だと思います。

しかし、DRMと補償金でどちらの方がユーザーの自由度が高いかと言うと、補償金ではないかと思います。

なお、先日放送された、CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X)ネットラジオでも、補償金とDRMについて、津田さんが質問に答えていました。
チャットのログでも、若干その話題が出ています。

刊行記念トークショーでの質問に答えるネットラジオ+その質疑応答チャット 無事終了しました。 (CONTENT'S FUTURE)
http://blog.shoeisha.com/contentsfuture/2007/09/post_9.html

CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X)

CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X)

追記

津田さんが、音楽配信メモITmediaの記事について、自分の発言の趣旨を書かれています。
こちらも併せて読んでください。

音楽配信メモ 「ダウンロード違法化/iPodの補償金対象化」がほぼ決定した件と、ITmediaの記事で抜粋されている発言についての補足
http://xtc.bz/index.php?ID=472

追記その2

CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X)ネットラジオのチャットログのDRMと補償金についての質問のところが、再構成して公開されました。

【補償金】Q.2 補償金とDRMの究極の2者選択ですが、……【DRM】 (CONTENT'S FUTURE)
http://blog.shoeisha.com/contentsfuture/2007/09/q2_drm2drm.html

この質問者は私です。