過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録を読む−漫画分野

漫画分野では日本漫画家協会松本零士氏からヒアリングを行っています。

文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第2回)議事録・配付資料−文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102.htm

配付資料
日本漫画家協会(PDF)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102/001.pdf

松本零士氏の発言

あまり取り上げるべき発言は見あたらないのですが、次の点は指摘しておきたいと思います。

もう一度言いますけれども、各言語圏別に地球上全域に広がっております。そして、現在の状況はといいますと、漫画・アニメーションは電子媒体を含めてDVDやビデオ、放送、あるいは出版物を含めて翻訳されたものが出ておりますが、その対価というものは今の現在ですら直接入ってくるものは約100分の1です。実は100倍のものが手元に来て、日本に入って来ていいはずなんですが、その金銭は大きく国益を損じていると信じております。

対価が100分の1というのが本当なのかどうかは分かりませんが、それは契約と交渉の問題だと思います。
自分たちに有利な条件いかに引き出して契約を結ぶか、それに力を注ぐべきであって、現状のまま、仮に保護期間を延長しても、対価が100分の1という状況には何の変化も起こさないと思います。
ここで何度も取り上げていますが、夏目房之介氏の著書「マンガ 世界戦略―カモネギ化するマンガ産業」が既に漫画・アニメ産業が海外から収奪されている状況に警鐘を鳴らしています。漫画界としてこれに対してどのように取り組んでいるのでしょうか。

マンガ 世界戦略―カモネギ化するマンガ産業

マンガ 世界戦略―カモネギ化するマンガ産業

次の発言については、質疑のところで取り上げます。

もう数年で私の父親の権利は切れますと言って、涙ぐまれた娘さんの涙が忘れられません。それは今年あったことです。あと3年で切れますと。しかし、全員が知っているタイトルの持ち主なんです。若死にしたためにそういうことになります。

質疑

津田委員からの質問。

純粋な興味なんですけれども、松本先生のところに主人の著作権が切れてしまうというのを訴えてこられたのは、どなたの御遺族なのかなと。

松本氏の答え。

黄金バット』を書かれた永松健夫さんの御遺族です。非常に有名な作品なんですが、今でも色々利用される可能性はあるんですが、非常に早く亡くなられたんです。40代ぐらいで亡くなられたんだと思うんです。そういうことがあります。『黄金バット』という名前を知らない人はほぼいないはずなんですね、どんな作品かというのは別にしても。

松本氏が何度か述べていた、父親の著作権が切れると松本氏の前で涙を流されたのは、「黄金バット」の著者の永松健夫氏の御遺族と言うことが、明らかになりました。
少し調べてみたのですが、永松健夫氏は1961年に亡くなられたようです。

マンガ家生没年早見表
http://homepage2.nifty.com/Curious-G/starthp/subpage23.html

上記ページの記載では「1261年」となっていますが、1961年の誤記と思われます。

漫棚通信ブログ版: 加太こうじ「紙芝居昭和史」
http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_e304.html

1961年に亡くなられたのだとすると、2011年まで著作権が存続することになりますので、松本氏が「あと3年」と言われているのは、計算間違いでしょう。あと4年半です。
現在「黄金バット」がどれだけ商業的に流通しているのでしょうか。