過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会議事録を読む−書籍分野

書籍分野では日本書籍出版協会の金原優氏からヒアリングを行っています。

文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第2回)議事録・配付資料−文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102.htm

配付資料
日本書籍出版協会
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/021/07050102/007.htm

金原優氏の発言

延長問題や裁定制度については、意外にもそれほど変な発言は無かったと思います。
アーカイブについては

絶版等の入手困難な出版物ということでは、利用せざるを得ない、あるいは利用したいという状況は理解をいたしますが、絶版という定義をもって利用できるということについては、出版協会としては反対であります。絶版というのは判断が非常に難しい状況でありますし、また出版物の多くは現在、印刷媒体のみならず、オンデマンド出版のような形で流通しているものもあります。それから、例外でしょうけれども、1つの著作物が2つ以上の出版物によって流通するというケースもあります。
 そのような状況で、1つが絶版になったからといって、著作権が消滅するということではもちろんありませんので、このようなことについては、要望については理解いたしますが、制度については非常に慎重に、特に権利制限は拡大運用、拡大解釈をされる傾向がありますので、慎重にして頂きたいと思います。

書籍の分野においては、アーカイブの問題はそれほど深刻な問題ではないと、私は考えます。と言うのも、出版業界が自分達で構築するまでもなく、図書館というアーカイブが存在しているからです。
原則として、国会図書館には国内で出版された本は納本されますし、大学図書館公共図書館にも非常に多くの書籍が所蔵されています。さらに各図書館は単館として存在しているのではなく、相互貸借や文献複写の図書館のネットワークがあり、他館の蔵書でも取り寄せが可能になっています。さらに、後ほど出てくる青空文庫国会図書館近代デジタルライブラリーを初めとした、インターネット上でのアーカイブ活動も行われています。
なので、絶版であってもアクセス可能である場合が結構あるのは事実です。
とはいっても、絶版になる書籍の数は膨大ですし、絶版にせず、品切れ状態で放置されている出版物も非常に多いかと思います。それらの書籍をアーカイブに載せるな、というのであれば、出版界としてそれらの書籍をどうしていくのか、もっと積極的に取り組むべきではないでしょうか。ただ反対、というだけでは、それらの書籍を死蔵させておきたい、という意思表明でしかないと思います。

さらに、権利制限は拡大解釈・拡大運用はされていません。
権利は拡大解釈・拡大運用されてるのが現状です。金原氏自身が拡大解釈をした発言をこれまでしてきたと思います。

質疑

金委員が、著作権保護期間が終了した出版物のうち、利益を生んでいるものがどれくらいあるか尋ねていますが、金原委員は明確に回答していません。