国際標準という詭弁

延長派の人たちが延長の理由としてあげるのは、「国際標準」ということしか無くなってきているが、この「国際標準」さえ詭弁であることは、昨日のシンポジウムでも会場からの質疑で出てきた。
欧米では「撤回権」があるが、日本には無い、なんで保護期間のことしか言わないのか、と。

私は「撤回権」は無くてかまわないと思っているので、その点は「国際標準」でなくても全くかまわないが、ごく最近、「国際標準」から逸脱した著作権法がなされていることも、指摘しておきたい。
昨年12月に成立した著作権法改正には、罰則の強化が盛り込まれており、懲役刑は5年以下から10年以下に、強化された。
しかし、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、中国、韓国では、最高で5年以下の懲役である。

文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第5回)議事録 [資料1] 3.罰則の強化について−文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/06060713/001/008.htm

なお、上記資料において、イギリスは「10年以下」となっているが、これは「2年以下」の誤りであったことが、第7回の法制問題小委員会で文化庁著作権課より述べられている。

文化審議会 著作権分科会 法制問題小委員会(第7回)議事録−文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/06082111.htm

では、「国際標準」を理由に著作権保護期間の延長を主張されている方達は、先の著作権法改正に反対したのでしょうか。罰則の強化は「国際標準」から外れていると主張したのでしょうか。
私は寡聞にして、そのような話は知りませんし、昨日のシンポジウムでもそのような話は出てきませんでした。
自分たちの都合の良いときだけ「国際標準」を持ち出して、自分たちに不利になるときには「国際標準」を持ち出さないというのは、都合が良すぎるのではないでしょうか。

保護期間延長の根拠たる「国際標準」というのは、彼らにとってそのようなものでしかないのだと、私は思います。