報道と権利の制限

asahi.com芸術選奨の画家が盗作? 文化庁が調査に着手 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/0529/TKY200605290154.html

この事件自体は結構単純な事件だと思う。
文化庁が絡んでいるから大きく取り上げられただけでしょう。
ところで、この事件の報道で、当該の絵画の画像が新聞やWEBに掲載されている。
screenshot
この絵画の画像について、著作権はどう絡んでくるのだろうか?
結論から言うと、著作権は絡まない。
著作権者の許諾なしに、当該の絵画の画像を使うことができる。
これは、著作権法の第41条によって権利制限がなされている。

(時事の事件の報道のための利用)
第四十一条 写真、映画、放送その他の方法によつて時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴つて利用することができる。

この規定があるから、新聞紙上に当該の絵画の画像を掲載することができるし、私たちもその絵画を見て、盗作であるか否かを考えることができる。

権利の制限とはこういうものだと思う。

よく「権利の制限は権利の剥奪だ」と主張する人がいるが、この事例を考えてみれば権利制限は権利の剥奪ではないということが分かるのではないか。

今回のように著作権の事件が起きている際に、当該の著作物にふれることなしに、権利侵害であるか否かは判断できない。だからこそ、権利制限をして、報道においては著作物を権利者の許諾なしに著作物を利用することができると定められているのだ。
そして、報道の場面でその著作物が利用されたからといって、著作権者の権利が剥奪されている訳ではない。その著作権者の権利はしっかりと確保された上で、でもここまでは権利が及びません、と定めているのが権利の制限規定なのだ。

繰り返すが、権利の制限とは、権利の及ぶ範囲を定めているもので、決して権利の剥奪ではない。
権利の及ぶ範囲を定めているのが権利の制限規定なのだ。
一度与えておいて剥奪しているわけではない。