貸与権の記事

「ザ・ハードコア ナックルズ」という雑誌のVol.2に、貸与権の記事が掲載されています。

昼間たかし. 漫画著作権をめぐる大手出版社の闇.
ザ・ハードコア ナックルズ. Vol.2, p.96-9, (2006)

貸与権を巡るごたごたをまとめた記事。
「大手出版社の闇」と大仰なタイトルだが、「闇」というほどの物は無いと思う。
昼間氏は「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」が最初は新古書店・漫画喫茶を問題にしていたが、「貸与権」を前面に出したために、レンタルコミックがターゲットになってしまったことを、「失敗」と考えているようで、ある大手出版社の漫画編集者の声を紹介している。

貸与権を全面に押し出す限り、レンタルブックとしか交渉できないのははっきりしていた。貸与権だけでなく“閲覧権”についても主張すべきだった。しかし、出版社はどちらが出版社にとって利益が多いかのみを考え貸与権ばかりを主張した結果“閲覧権”はおざなりになってしまった。

私は、貸与権について一貫して反対の立場であるが、この声を読むと、まだ貸与権で良かったと思ってしまう。
「閲覧権」などというものは、現行著作権法には無いものなので、具体的にどのような権利を想定しているのかは不明だが、例えば「貸与権」が貸与を禁止できる権利であることからすると、「閲覧」を禁止することができる権利と想定できる。
そう考えると、この編集者は漫画を閲覧すること、つまり漫画を読むことを禁止できる権利を著作権者に与えよ、というとんでもない主張をしていることになる。
私は、出版社が自分たちの利益を考えて「貸与権」を主張したことよりも、「閲覧権」というものを主張する人が出版界にいることの方が「大手出版社の闇」ではないかと思う。