声明を読んで

文芸家協会のサイトに声明の全文が掲載されました。

図書館の今後についての共同声明
http://www.bungeika.or.jp/200511seimei-toshokan.htm

全文を読んでの感想を述べます。

まず一言で言えば、大きなお世話。

図書館は作家・文芸家のためにあるものではありません。
利用者のためにあるものです。

個々の利用者が図書館に対して、こうあって欲しいと言う要望を出すことは、当然だと思います。また、個々の作家・文芸家が、自分が利用している図書館に対して「こうあって欲しい」と言うのはかまわないと思います。
しかし文芸家5団体が連名で図書館のあり方について声明出していることには、あなた方には関係のないことでしょう、としか言いようがない。
重ねて言うが、図書館は作家・文芸家のためにあるわけではないからだ。

言うのは自由だが、そんな声明には何の意味もないし、図書館側が耳を傾ける義務はない。無視してかまわないと思う。

次に書かれている内容について。

一番気になるのは次の箇所。

図書館予算の削減は、本来図書館に置かれるべき良質の図書の販売を減少させ、結果としては、文芸文化そのものが危機にさらされているというべきでしょう。

「本来図書館におかれるべき良質の図書」って何なんでしょうか。
どのような図書をおくべきか、それは個々の図書館によって違ってきます。公共図書館でも、各地域によっ優先順位は絶対に違うはずです。ある図書館においては絶対に所蔵しなければならい図書でも、違う図書館においては所蔵する必要性の薄い場合があります。
図書館でどのような図書を所蔵するか、それはその地域特性や図書館利用者のニーズの違いによって変わってきます。
作家・文芸家が「本来図書館におかれるべき良質の図書」だと思っても、図書館にとってはそれが「本来図書館におかれるべき良質の図書」であるとは限りません。
本を書く側、出版する側が、その本が「本来図書館におかれるべき良質の図書」であると思うのは自由ですが、それが本当に「本来図書館におかれるべき良質の図書」であるか否かは、図書館の側、そして図書館利用者が判断すべきことです。

また、

文芸文化を護るという観点から、ヨーロッパなどの先進諸国では、すでに図書館での無料貸出に対して、公貸権(Public Lending Right)が設定され、著作者に対して国家基金による補償金が支払われています。先進国を自負する日本においても、著作者等に対して何らかの補償金制度の実現が検討されるべき時期に来ていると思われます。

の部分については、その主張が幼稚過ぎるとしか言いようがありません。
本当に「公貸権」が必要だと思うのなら、その必要性をきちんと主張して皆を納得させてください。
「ヨーロッパの国では公貸権が導入されているから日本でも導入すべき」というのは、子供が「●●ちゃんも、○○ちゃんも、みんなあのおもちゃ持っているのに、どうして買ってくれないの」とだだをこねているレベルの主張でしか無いと思います。

他の国がどうであろうと、そんなのは関係ありません。
日本において、図書館の貸出に対する補償金制度が本当に必要か否か、それが問題なのであって、他の国がどうであるかは、何ら意味を持ちません。*1

声明を出すのであれば、もっと意味のあるものを出してもらいたいです。

*1:これは図書館側にも言えることであって、他の国に比べて図書館予算が少ないから図書館予算を増やせと言う主張には何の意味も無いです。