ダブルスタンダード

昨日、法制問題小委員会での複写についての議論に不満を書いたが、図書館員の愛弟子で図書館での複写について、おもしろい論考がなされていた。

図書館員の愛弟子: ある図書館の使い方(7)―複写にまつわる二つのDouble Standard-1
http://lomax.cocolog-nifty.com/apprentice/2005/06/7_f4e7.html

「全冊複写」と「繰り返しの貸出」の二者択一を打ち出している点については、あまり賛同できないが

 実際、何度も借りるのは面倒なんである。返却期限を気にしなければならないし。図書館という建物まで足を運ばねばならないし。
 「複写」してしまった方が楽だ。
 もしかすると、何度も借りる方が普通じゃないのかもしれない。殊に、研究費が出る大学図書館では複写した方がお得(もちろん、学費を払っているわけだからタダではない)。
 だとすると、図書館(殊に大学図書館)は、構外での私的複製を暗に認めているという疑念がわく。ダブルスタンダードというのは、この点だ。

との指摘については、賛同する。
しかし、これは図書館だけが行っているわけではない。
このようなダブルスタンダードは良く見られる。
社団法人著作権情報センター(CRIC)という団体がある。
最近話題の社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)の助成を受け、

著作権思想の普及に関するさまざまな事業や著作権制度の改善に資するための調査研究を行い、文化の発展に寄与

することを目的とした社団法人である。
CRICは資料室を持っていて、会員だけでなく一般にも開放している。
私はまだ利用したことが無いが、その利用方法に以下のようにある。

貸出
図書資料の貸出は行っていませんが、著作権法の範囲内で一時持ち出しにより複写していただくことは可能です。

つまり、一時的に貸し出すから、外で30条の範囲内で私的複製をしてこい、ということなのだろう。
著作権思想の普及を目的とした団体がこのような運用をしているのである。
これでは横浜市立図書館がやっていることと、どれだけ違いがあるのだろうか?

何度か書いたが、私は著作権を語る上で次の3点を念頭に置くことが重要だと思っている。

  • 誰もが著作権者であり、且つ同時に利用者でもある。
  • 著作権を語る上で第三者という立場はあり得ない。誰もが当事者である。
  • 自分が他者の著作権を侵害している可能性がある。

この3点をふまえずに「著作権思想」が机上の空論で語られているから、このようなダブルスタンダードが蔓延するのではないだろうか。