再販制度維持で「活字文化」は振興されるのか

「文字・活字文化振興法」については、これまでは余力が無かったのでほとんど取り上げて来なかったですが、GWという機会に少し取り上げてみたいと思います。
いくつかのブログで取り上げられていますが、肥田美代子議員のサイトに「文字・活字文化振興法の施行に伴う施策の展開」が掲載されており、その中に「著作物再販制度の維持」が上げられている。
果たして、「著作物再販制度の維持」が文字・活字文化*1の振興に結びつくのだろうか?
その疑問を正面から取り上げている文献があった。

利根川樹美子. 日本出版市場の動向とデジタル化の影響.
出版ニュース. 2005年4月中旬号, 6-12p.

利根川氏は、再販制度維持派の存続させるべき理由

  1. 書籍などは文化を担っており、経済効率性だけで判断するのは不適当
  2. 価格競争になると地域小売店などが淘汰され地方の消費者が不利益を受ける
  3. 新聞は価格競争により戸別配達が難しくなったり質が落ちたりして民主主義の基盤が維持できない

に対して

  1. 画一配本という文化の問題
  2. 振興する地域小売店の「淘汰」-小規模書店の廃業と新規書店の大型書店化
  3. 新聞紙上の寡占体制が民主主義の基盤に及ぼす文化的影響

の反論を述べている。
詳細はこの文献を読んで頂きたいが、特に2点目について

現行の制度のもとで、既に10年以上にわたって、地域小売店が大量に「淘汰」されてきた。

との指摘は、再販制度維持の主張に対する大きなカウンターパンチになっていると思う。
再販制度維持」を主張してきても、すでに小規模書店が淘汰され続けている以上、「再販制度維持」は「活字文化振興」には効果が無いと言えるのではないだろうか。

*1:「文字・活字文化」という言葉自体が曖昧なので、それが何を指し示すのかについて検証していく必要はあるが、今回はそれは問わないことにします