著作権等管理事業者

津田氏の「だれが「音楽」を殺すのか?」は賛同する部分が非常に多いが、一つだけ津田氏の意見に異を唱えたい箇所があった。
そこは、310〜311ページの「バランスのとれた著作権管理」の所である。
津田氏はJASRACの一極集中を批判し、「著作権等管理事業法」により第2JASRACが誕生しているが、公正な競争がまだ十分になされていtないと言う。そして

音楽著作権管理の分野にきちんとした市場競争があれば、JASRACで問題視されているさまざまな部分も、きちんと解決する方向に行くのではないだろうか。

と述べている。
しかし、私はこの意見には賛同しない。
著作権等管理事業法は利用者にとってはほとんどメリットの無い法律だからだ。

著作権等管理事業法により、これまで独占されていた著作権の管理事業の規制が緩和され、新規参入により市場競争が促進され、ユーザーにも利用しやすくなる、ということがよく言われる。
しかし本当にそうだろうか?
音楽の利用許諾を取りたいと思った時に、JASRACが管理している曲でだから利用したい、第2JASRACが管理している曲だから利用したい、と言うことがあるだろうか。そんなことはない。この曲だから利用したいと思うはずである。
どの管理事業者が管理しているかと言うことは、利用者にとっては重要ではなく、利用したい曲をどの管理事業者が管理しているか、と言うことが重要なのだ。
従って、管理事業者間の競争は利用者に対するサービス競争ではなく、管理する曲の獲得競争になる。つまり著作権者に対するサービス競争が行われるのだ。
その結果、複数の著作権管理事業者間の競争は利用者を抑圧することになる。

私は、文化庁著作権課の職員があるセミナーで講演した際に、上記の構造について質問したことがあるが、その職員はその構造を認めている。
また、文献複写の分野では日本複写権センターがほぼ独占していたが、その後学術著作権協会日本著作出版権管理システム等が参入しているが、複写使用料は日本複写権センターより高価に設定されている。

再度言いますが、管理事業者間の競争は利用者に対するサービス競争ではなく、著作権者に対するサービス競争になってしまうと思います。
著作権等管理事業法の最大の問題点は、この点です。