NIKKEI NET ネット時評

日本のレコード産業界はどこへ行くつもりなのか
前川 徹 富士通総研 経済研究所 主任研究員
http://it.nikkei.co.jp/it/njh/njh.cfm?i=20040609s2000s2

前川氏の意見に、はげしく同意します。

 (社)日本レコード協会は「『流通促進』あるいは『消費者の利便性』の名のもとに著作権者の権利を弱めることがあってはならない。それは角をためて牛を殺すことになる」(「日本のレコード産業からの提言」平成14年4月10日)と主張しているが、角をためて牛を殺そうとしているのは、実はレコード産業界自身ではないのか。

 著作権を保護することは重要なことであるが、そのために使い勝手が犠牲になったり、消費者に余計な負担をかけることがあってはならない。にもかかわらず、著作権保護という錦の御旗を立てて、自分たちの目先の利益にこだわり、インターネット時代の音楽ビジネスのあり方を見誤っている。そもそも、消費者に支持されないサービスや産業に明るい未来があるわけがない。

角をためて牛を殺そうとしているのは、レコード産業界もそうですし、出版界も同じだと私は思います。
レンタルコミック、新古書店マンガ喫茶、加えて図書館。読者(=利用者)に支持されているサービスを攻撃・妨害しても、読者の支持は得られないと思います。

貸与権の次は

貸与権の次は、対図書館の公貸権、対新古書店の消尽しない譲渡権、対マンガ喫茶の展示権の拡大だと思っていましたが、それよりも別の権利が先にできてしまうかもしれません。
日本書籍出版協会日本雑誌協会の共同声明が出ていました。

改正著作権法成立に関しての両協会声明
http://www.jbpa.or.jp/taiyoken-seimei.htm

注目すべきは次の一文。

一方で、出版者の権利問題につきましても貸与権の付与を契機に前進させたいと存じます。

出版社はレコード会社や放送局等とは違って、著作隣接権が設定されていない。
私はこれはとても良いことだと思うし、レコード会社や放送局に付与されている隣接権ももっともっと制限すべき(できれば廃止すべき)だというスタンスである。
出版社が著者とは別個の権利を持ってしまうと、現在音楽界で起きているように、アーチストの意向にかかわらず、レコード会社の方針が優先されるようになってしまうのではないだろうか。
漫画原稿を守る会が、いともあっさりつぶれてしまったが、あの事件のように、マンガ家の「権利」が踏みにじられるケースが起きても、マンガ家は出版社に逆らえなくなるのではないだろうか。